中小企業退職金共済制度(以下「中退共」)とは、独力で退職金制度を整備することが難しい中小企業でも、退職金制度を設けやすくすることを目的とした制度です。また、掛金が全額損金(個人事業者の場合は必要経費)になるなど税務上のメリットもあります。今回は中退共について説明をしていきたいと思います。
1)加入要件
中退共は、「資本金(出資金)の額要件」「常時使用する従業員数要件」のいずれかを満たすことで加入ができます。これらの数字は業種ごとに異なり、例えば、小売業であれば前者は5,000万円以下、後者は50人以下となります。
2)掛金
掛金は月額5,000円から30,000円までの範囲の定められた16通りの中から選択することができます。
これらに加え、労働時間が週30時間未満のパートタイム従業員等については、月額2,000円から4,000円までの範囲の定められた3通りの中から選択することができます。
さらに、新しく中退共に加入する事業者には、掛金の一部を国が負担するなどといった、国による助成もあります。また、掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額計上できます(資本金の額または出資の総額が1億円を超える法人の法人事業税には、外形標準課税が適用されます)。
3)メリット・デメリット
メリットは、1.従業員が24ヵ月以上勤務すれば退職金が掛金総額を上回る 2. 掛金が全額損金(個人事業者の場合は必要経費)になる 3. 退職金は中退共から従業員に直接支払われるため、退職金の支払い時に会社に不利益は生じない 4. 従業員の福利厚生に利用できる提携サービスがある 等が挙げられます。 対してデメリットは、 1.掛金をいったん決めると後に減額しづらい 2.掛金は一円も返済されない 3.全従業員が対象となる制度のため、会社として退職金を支払いたくない従業員にも自動的に支給されてしまう 等が挙げられます。
4)まとめ
中退共は以上のような制度となります。メリットとデメリットを比較し、また、他の退職金積立手段とも比較して、自社に向いている制度であると感じられましたら、加入の検討をしてみてはいかがでしょうか。