投稿者: SOLARIA-STAFF

住民税、森林環境税、ふるさと納税について

6月に入り、勤務先から住民税決定通知書や居住する市区町村から住民税納付書が届いたころでしょうか。住民税とは自分がその年の1月1日に居住する地域に納付する地方税です。届いたままにしたり、なんとなく納付書の金額を支払ったりしていないでしょうか。今回のテーマは住民税の徴収、令和6年度より徴収が開始された森林環境税、ふるさと納税の控除についてです。近年ふるさと納税をする人が増えていますが、住民税に反映されているかどうか確認されていますでしょうか。今回はこれらの内容についてお話しします。

 

・住民税について

(1)普通徴収

納付方法は「普通徴収」と「特別徴収」の2種類があります。普通徴収は納税者が市区町村に直接税金を納める方法です。市区町村は納税者から申告された前年1年間の所得などに基づき、確定した住民税の税額を納税通知書に記載して納税者に送付します。納税者はこの納税通知書に従って住民税を市区町村に納めます。1年分を4回に分割するか一括で納付するかを選択できます。

 

(2)特別徴収

特別徴収とは納税者以外の者、給与の支払いをする会社などが納税者から税金を徴収して代わりに納める方法を言います。例えば会社員は原則として特別徴収税額通知が会社に送付され、会社がその会社員の住民税を毎月の給与から12分の1ずつ天引きして会社員の居住する市区町村に納めます。

 

(3)住民税決定通知書の見方

所得:前年1年間の年収から給与所得控除を差し引いた金額

所得控除:前年の所得から控除された金額

課税標準:総所得金額①から所得控除合計②を差し引いた金額(総所得③)

税額:課税標準欄に記載された課税所得をもとに計算された住民税(税額控除前所得割額)

納付欄:各月に給与から差し引かれる住民税額

 

住民税決定通知書が届くのは毎年5-6月ごろになります。市区町村から納税者や納税者が勤める会社に住民税の納付書とともに送付されます。

 

・森林環境税について

冒頭でも触れましたが、令和6年度から森林環境税の徴収が始まったのはご存じでしょうか。我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備に必要な地方財源を安定的に確保する観点から創立されました(出典:林野庁)。1人年額1,000円を市区町村に納付します。納税された森林環境税は国を通して森林環境譲与税となり、全国の都道府県と市区町村に配分されます。そして森林経営管理制度を始めとする森林整備やそれらを担う人材の育成など様々な取り組みに活用されます。

 

・ふるさと納税について

(1)ふるさと納税とは

自分の選んだ市区町村に寄付を行った場合に、寄付額のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税から原則として全額控除される制度です。例えば50,000円を寄付すると、2,000円を引いた48,000円が所得税と住民税から控除されます。控除を受けるためにはふるさと納税を行った翌年に確定申告またはワンストップ特例制度(5か所以内の納税の場合)による手続きが必要となります。

 

(2)控除されたか確認する方法

住民税決定通知書の摘要欄にある「寄付金控除」または「税額控除額」の金額が昨年のふるさと納税額の-2,000円と同額になっていれば正しく控除されています。

 

(3)控除されていなかったら?

原因として考えられるのは申告を忘れたときです。その場合控除が適用されません。確定申告は寄付をした翌年の3月15日までですが、5年以内ならさかのぼって還付申告をすることが可能です。

 

これを機に住民税決定通知書を見直してみましょう。これまで意識したことのなかった人もご自身の住民税について確認してみてはいかがでしょうか。

企業は消費税を“払っていない”?消費税の仕組みと中小企業の苦悩

 私たちは日本で生活をしていく中で様々な税金を払っています。中でも特に身近に感じるのは「消費税」ではないでしょうか。物やサービスを購入する際には消費税を加えた料金を支払い、それはレシートにも明記されるため、多くの方が「消費税は消費者が払っている」と認識しています。では「企業は消費税を払っていない」のでしょうか。 

 今回は、そのような消費税の仕組みと、誤解されがちな実態、さらに制度の影響について考えてみたいと思います。 

 

  1. 消費税の基本的な仕組み 

 消費税は、納税者と負担者が異なる「間接税」に分類され、消費者(=負担者)が支払った消費税を企業(=納税者)が一時的に預かり、決められた期間ごとに税務署に納める、という仕組みになっています。 

 ただし、企業は受け取った消費税をそのまま納めるわけではありません。実際には、企業が仕入れ時に支払った消費税は控除され、納税するのは「預かった消費税 - 支払った消費税」の額となります。これを「仕入税額控除」といいます。 

 

2. 企業は消費税を払っていない? 

 消費税の負担者は消費者ですが、消費税の一部、あるいは全部を肩代わりしている企業が少なくありません。その原因としては価格競争や取引先との力関係で、税込価格を維持せざるを得ない状況であることが挙げられます。 

 そうなると制度上は消費者が払う税金であっても、実際には企業の利益が削られてしまうことになります。 

例:1万円の商品やサービス → 本来は税込11,000円にすべき  

 「税込1万円でお願いします」と言われる → 消費税分(1,000円)を自己負担 

 

3. インボイス制度 

 2023年に導入された「インボイス制度」も、この問題をより複雑にしました。 

 インボイス制度とは、事業者が仕入税額控除を適用するためには、登録事業者が発行する適格請求書(インボイス)を受け取る必要がある、という制度です。今までは売上が少ないことで納税を免除されていた事業者も、適格請求書を交付できるよう税務署に対して事業者登録を行うためには課税事業者になる必要があります。 

 インボイス制度により、一部の免税事業者は取引の相手から「登録しないと取引できないが値上げはできない」と圧力を受け、上記2で例示のように課税事業者となったうえで消費税相当分を自己負担とせざるを得ない状況に追い込まれています。 

   

 

4. 消費税は公平な税か? 

 政府は消費税を「広く薄く、安定的に徴収できる税」として評価しています。また、少子高齢化社会において、年金・医療などの社会保障費を支える財源として、今後ますます重要になるとも言われています。 

  ただ消費税は、所得の低い人ほど、収入に対して大きな負担を強いられ、年収1000万円の人も年収200万円の人も、同じ10%の消費税を払うのは一見公平に見えて、実際には所得が少ないほど打撃が大きいです。 

 

 消費税は消費者が払っているようでいて、現実には企業や事業者が負担していることも多く、そうした企業の負担となっています。また消費者の立場に立っても、所得の低い人ほど収入に対して大きな負担となります。 

  今後、消費税率の引き上げや制度変更が議論される中で、こうした実態を正しく理解し、単なる「数字の話」ではなく「誰がどのように負担しているのか」を意識することが、私たち一人ひとりに求められているのではないでしょうか。 

 消費税についての相談があればお問合せください。 

令和7年度税制改正「年収160万円の壁」について

 4月になりましたので、新しい環境になっている方も多いのではないでしょうか。お子様が高校生、大学生になってアルバイトを始める等周りの方の環境の変化も色々あると思います。 

 税制も41日から新制度が施行されています。その中でも世間の皆様の興味を一番惹いている年収103万円の壁の変更についてお話しします。 

 

1 年収103万円の壁とは 

 基礎控除額48万円+給与所得控除額55万円を合わせた金額のことを言います。
給与所得者については、103万円までであればいくら稼いでも所得税は非課税となります。 

※基礎控除:個人所得税において誰にでも適用される最低限の控除制度。
※給与所得控除:給与収入にかかる所得税の負担を抑えられる控除制度で、収入金額に応じて 控除額が異なります。
 

2 年収160万円の壁へ 

 (1)控除額の引き上げ 

 基礎控除を48万円から58万円に引き上げ(合計所得額が2,350万円以下の個人が対象)。給与所得控除を55万円から65万円に引き上げ。 

 

 (2)基礎控除の特例 

 それぞれ10万円ずつ引き上げられて年収の壁は123万円になると思いきや、今回「基礎控除の特例」の創設が盛り込まれました。 

 給与年収200万円相当以下であれば58万円に引き上げられた基礎控除に37万円控除額が恒久的に上乗せされます。つまり基礎控除58万円+基礎控除の特例37万円+給与所得控除65万円で160万円となりました。2025年分の所得より適用されます。 

 

 (3)住民税への影響 

 給与所得控除の最低額が65万円まで引き上げられたことにより、住民税が非課税になる年収が110万円となります。
住民税非課税額はお住いの地方自治体によって異なります。
基礎控除額については現行の43万円から改正はありません。 

 

 所得税の控除が増えたことは大変うれしいことですが、今回の改正の背景は働き手の不足によるもので、労働力を増やそうという考えのもと行われたという報道もあります
しかし所得税控除の引き上げに伴い住民税、社会保険の控除の引き上げが未だ追い付いていないので、働く側はまだ働き辛い状況のままだと思います。今後の動向に期待したいですね。 

ビットコインなどの仮想通貨を相続し、売却した場合110%の税率がかかるのか?

ネット記事や会計事務所のコラムなどで最近よくビットコインなどの仮想通貨を相続し売却した場合、最高で110%の税を取られ、
保有している資産の価値以上の納税義務を負う可能性がある、などと書かれており、不安を持つお客様もいらっしゃいます。

なぜ110%もの課税になるのか
こういった記事に書かれている内容は以下のようなものです。

(前提)
1,亡くなられた被相続人が生前仮想通貨を1万円で購入
2,被相続人が亡くなられた時点で仮想通貨の評価が100億円
3,引き継いだ相続人が仮想通貨を100億円で売却

この場合、2の相続開始時点で相続税が55%かかり55億万円の納税が発生します。
3の売却時点で100億円の売却に対し所得税・住民税が55%かかり
55億円の納税が発生し、合計110億円納めることになります。
(相続税や所得税の計算方法については簡略化しております)
このため持っていた資産(仮想通貨)よりも10億円多い税金を納めることになり
破産してしまいますよ、とネット記事などには記載されています。

こういった記事の問題点は、2つあります。
・仮想通貨に対する法整備が遅れている
・譲渡所得と雑所得を混同している

本来の租税原則にいう公平な租税とは、「担税力に応じて課された租税」ということで、
資産(担税力)を超えた110%課税は、原則から大きく逸脱している、と考えます。
法整備がされてないため、根拠が乏しいまま記事にしていると思われますが、
記事にする前に、何かおかしいと考える余地はあっても良いのではないでしょうか。

こういった記事には、仮想通貨の売却については譲渡所得ではなく雑所得だから
相続税の取得費加算(※)の適用ができないため、
さらに仮想通貨の取得費は被相続人が取得した価格の1万円を引き継ぐため
110%課税になります、と記載されています。

(※)相続税の取得費加算とは、
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を一定期間内に譲渡した場合に、
相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる制度。
具体的には、上記の例で、この特例が利用できた場合、相続税の55億円を、
売却時の取得費(経費)として計上することができ税額を大きく減少させることが可能です。

現在の整備されていない法律上、仮想通貨の売却は雑所得として扱われ、
この取得費加算の適用は難しいのでは、と思っています。
しかし、相続後の売却時に取得費を被相続人の取得費1万を引き継いでいることは疑問です。
この取得費を引き継ぐのは、譲渡所得となる資産について規定されている財産であって
金銭債権として扱われている仮想通貨については、取得費の引継ぎの対象外です。
(所得税法59、60)

仮想通貨の売却時の課税を、金銭債権の売却として雑所得扱いにしているにもかかわらず、
譲渡所得の資産として、取得費は被相続人の購入した金額1万円を引き継ぎますよとこちらは譲渡所得扱いとして、
さらに雑所得なんだから、相続税の取得費加算の適用はできません、と「雑所得」と「譲渡所得」を
110%課税の方向へ誘導しているように感じます。

現行の法律通り、金銭債権の譲渡として雑所得課税されるのなら、
単純に55%ずつ課税されるのではなく、上記(前提)のケースにおいて以下のように計算されるはずです。

相続開始後の準確定申告において
100億円の金銭債権の評価差益に対して所得税・住民税が55億円、
その後、相続税申告時に、財産(仮想通貨100億円)から債務(所得税住民税55億円)を差し引いた45億円に対し55%の相続税約25億円が課されます。
相続人が仮想通貨を100億円で売却する際には、取得費は引き継がず、
相続時の評価を取得費として、収入(100億円)から取得費(100億円)を控除し、所得0円で所得税・住民税は課されません。
この場合の税負担は所得税・住民税55億円と相続税25億円の80億円となり、税負担は80%となります。
取得費加算を摘要できた場合とかわりませんが、それでも高額です。
今後、税制改正で整備されると思いますので、税制調査会や国会での議論を注視していこうと思います。

ふるさと納税のルール変更点

【2024年10月からのふるさと納税のルール変更について】
 2024年も残りわずかとなり、ふるさと納税を活用された方も多いのではないでしょうか。
 今回はふるさと納税のルール変更について、2025年の変更予定と2024年10月の変更内容についてご案内いたします。

※2023年10月のルール変更とふるさと納税の流れなどについては、こちらをご参照ください。
 ふるさと納税について(2023/9/25)-税理士法人SOLARIA/社会保険労務士法人SOLARIA

【2025年10月の変更予定】
ポイント還元の禁止
仲介サイトによる寄附した人に特典ポイントを付与する行為について、仲介サイトを運営する事業者間でポイント還元を高める競争の過熱が進んでおり、ふるさと納税の自治体を応援するという趣旨からずれてきているとして、ポイントを付与するサイトを通じた募集の禁止が発表されました。

【2024年10月の変更まとめ】
1.宿泊施設の利用券に関する基準の見直し
 返礼品が宿泊施設の利用券の場合で、1人1泊あたりの費用が5万円を超えるときは、原則として同一県内で展開している宿泊施設に限り返礼品とすることが認められることとなりました。
 これにより、全国的に展開している高級ホテルチェーンなど、地域との関連性が希薄な施設の利用券は返礼品の対象外となりました。

2.返礼品を強調した宣伝広告の禁止
 返礼品の魅力を過度に強調する宣伝広告が禁止されました。
 「お得」「コスパ最強」「ドカ盛り」「圧倒的なボリューム」などの表現は2023年のルール変更で既に禁止されていますが、「必要寄付金額の引下げ」や「返礼品の個数の増量」も、適切な寄附先の選択を阻害するとして禁止されることとなりました。

3.地場産品基準の厳格化
 返礼品として提供される製品やサービスについて、地域との関連性がより重視されるよう基準が見直されました。
 これにより、地域外で生産された製品やサービスが返礼品として提供されることが制限され、地域経済の活性化が促進されます。

ふるさと納税のルールについては、制度本来の趣旨に近づくように毎年のように改正がされておりますが、納税者にとっては良い制度であることは変わりありません。ポイントの取得を考えられている方は、2025年のふるさと納税についてお早めに動かれていった方がよいかもしれません。

年末調整の制度改正点

早いもので、2025年が近づいてきました。
年末が近づくと、税理士事務所は年末調整、確定申告の準備が始まります。
皆様の中にも、保険会社や年金事務所から控除証明書が届き、会社から年末調整の書類提出を求められ始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、2024年の年末調整の制度改正についてお話しします。

1.定額減税
令和6年6月支給分より、所得税・住民税の定額減税が実施されました。
所得税については、年末調整にて改めて計算します。

例えば、6月に定額減税を受けた人で、12月末時点で令和6年度分の合計所得金額が1,805万円を超えてしまった場合、定額減税が受けられなくなるので、その分年末調整にて税金を徴収されることになります。

そのほかにも、6月以降にこどもが生まれた、扶養親族の年収が想定を超えて扶養の範囲を超えた、などにより年途中で実施された定額減税の額が変更となれば年末調整にて調整することになります。

令和6年12月31日現在を基準として定額減税額を計算します。
 所得税の定額減税額は、下記のとおりです。
 本人30,000円 + 同一生計配偶者・扶養親族一人につき30,000円
 ※例:専業主婦の妻と子ども2人→30,000+30,000×3=120,000円 

2.申告書類の簡素化

⑴給与所得者の保険料控除申告書
 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除における、保険金の受取人や保険料負担者について、「続柄」の記入欄が削除されました。

⑵給与所得者の扶養控除等申告書
 令和6年の年末調整では令和6年度の扶養控除等申告書と、令和7年分の扶養控除等申告書も会社に提出する必要があります。

 これまでは、前年分と内容に相違がなくてもすべて記入して次年度分申告書を提出する義務がありましたが、一定の要件(自身や扶養親族の住所等が変わらない、扶養親族の年収が引き続き要件を満たす範囲内であること等)を満たす場合、内容を省略して「前年から異動なし」の文言を付記して提出することができるようになりました。

今年の年末調整の改正は、定額減税により年末調整の計算を行う人にとってはかなり負担が増えますが、計算にかかわらない人にとっては、少し手間が省ける内容でした。準備のために必要な書類は特に大きな変わりはございませんので、いつも通り資料をそろえて提出しましょう。

国内外の宿泊税・入島税について

秋の行楽シーズン、皆様はどこかへお出かけの予定はありますか。
最近は、外国人観光客の姿を見ることも多くなり、2024年6月に日本を訪れた外国人観光客は313万人となり、月ごとで過去最多となりました。2024年1月から6月までの半年間でも、1,777万人でこの時期として過去最多を更新しています。

観光客の増加は地域経済に恩恵をもたらす一方で、オーバーツーリズム問題により、公共交通機関の混雑、ゴミ処理、騒音など、深刻な問題となっている地域があります。その対策のため、オーバーツーリズムが深刻化している30超の自治体では、宿泊税や入島税といった観光税の導入・検討が進んでいます。

今回は、国内外で導入されている(導入予定となっている)宿泊税と入島税について観光地の取り組みを紹介します。

【宿泊税】
ニセコ町(北海道)
スキーを中心とする国際的なリゾート地として知られる北海道ニセコ町は、2024年11月に宿泊税を導入予定です。
税額:1人1泊最大2000円
 対象者:国内外からの宿泊客
 ※大学を除いた学校が主催する修学旅行などは対象外
 徴収方法:ホテルや旅館などの各宿泊施設が宿泊代に上乗せして徴収
 税の活用例:交通網の充実や、観光案内のデジタル整備などに使用

【入島税】
・宮島(広島県)
地方自治体独自の税金が2023年10月1日より新たにスタートしました。
その名も「宮島訪問税」。お隣の広島県廿日市市が制定した税金で、観光名所として名高い宮島を訪れる観光客に対して課税する税金です。入島税は全国初。
 税額:1回の訪問につき100円(1人500円で年間パスポートのような支払方法もあり)
 対象者:船舶で宮島を訪問するすべての方
 ※未就学児や修学旅行生とその引率者、障害者手帳交付者、宮島に居住・通勤・通学する人は対象外
 徴収方法:フェリーなどの運賃に上乗せなど
 税の活用例:訪問者の受入環境整備費(観光案内やトイレの整備など)や文化財や歴史的建造物の保存、島内無償ウォーターサーバーの設置などに充てられる

入島税は、海外でも導入されています。
・ベネチア(イタリア)
イタリア北部にある運河の街べネチアは、夏に多くの観光客が訪れることでオーバーツーリズムに直面し、数年前から観光税の導入を検討してきました。
2024年4月25日から、試験的に入島税を徴収することになりました。
 税額:1日5ユーロ(日本円で約800円)
 対象者:指定日にベネチアへ訪れる日帰り観光客
 税の活用例:観光地の施設の維持管理や清掃、地域住民の支援サービス等に使われる予定

・バリ(インドネシア)
インドネシアのバリ州政府は、2024年2月14日から徴収を開始しました。
 税額:15万ルピア(日本円で約1,500円)
 対象者:バリ島を訪問する全ての外国人観光客
 税の活用例:バリの文化と自然の保護に使われる予定

宿泊税や入島税の紹介をしてきましたが、観光客のための整備などに充てられるのであれば、有意義な税金となるのではないでしょうか。この税金がどのように使われ、町の魅力をどう高めていくのか、今後の展開に注目が集まりそうです。

災害時の納税猶予について

 令和6年1月に北陸地方における大規模な地震、また、先日台風10号による大きな被害が発生しました。台風や地震などの自然災害は、日本に住む私たちにとって身近な存在です。そのため、災害による被害に備え、被害に合った際に活用できる納税の緩和制度を2つ紹介いたします。
 なお、対象となる税金は災害のやんだ日以前に納税義務が成立しており、災害により財産に損失を受けた日以降1年以内に納期限が到来する国税が該当します。
————————————————————————————————————————————
1.災害により財産に相当な損失を受けた場合の納税の猶予(納期限が到来していない場合)
 災害により財産に相当な損失を受けた場合には、税務署に申請をすることによって「災害により財産に相当な損失を受けた場合の納税の猶予」を受けることができます。
 ※納税までの期間における担保は不要で、延滞税は全額免除されます。

(1)適用要件
 ①災害により財産に相当な損失を受けた場合(被害額が全資産額の概ね20%以上)
 ②災害のやんだ日から2か月以内に申請があること
(2)申請方法
 納税の猶予申請書を税務署へ提出
 ※納税の猶予を受ける税金によっては、別途添付資料が必要になります。
(3)猶予期間
 納期限から1年以内

2.災害等により納付困難となった場合の納税の猶予(既に納期限が到来している国税)
 災害により財産に相当な損失が発生し、納税の猶予を受けてもなお納付することが困難と認められる場合は、税務署に申請することにより、「災害等により納付困難となった場合の納税の猶予」を受けることができます。
 ※納税の猶予を受けるためには原則相当額の担保が必要で、延滞税は免除されます。
 (猶予金額100万以下、猶予期間が3か月以内または特殊な事情がある場合は担保不要。)

(1)適用要件
 災害その他やむを得ない理由に基づき、国税を一時に納付することが困難な場合
(2)申請方法
 納税の猶予申請書及び添付書類を税務署へ提出
 ※災害などの事実を証明する書類、財産収支状況書等
(3)猶予期間
 原則1年以内。やむを得ない理由があると認められるときは、既に認められている猶予期間と合わせて2年以内を限度として延長可能。
 なお、納期限未到来の納税の猶予を受けた場合で、猶予期間内に猶予金額を納付できない場合は、一般の納税の猶予を受けることができ、最長3年間猶予されます。
————————————————————————————————————————————
納税の猶予を受けるには決められた期限内で書類の提出が必要な場合もございます。
実害にあわれて、お困りの場合やご不明点等御座いましたら、お気軽にご連絡ください。

上場株式の売却損が生じた場合に活用できる「損益通算」と「繰越控除」について

今月、日経平均株価が「歴史的な乱高下」をしたことで市場が騒然としました。もし、上場株式の譲渡損が出た場合に、所得税で活用できる制度についてご紹介いたします。

 

【1】概要

上場株式を売却して損した場合、利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」という特例があります。

 

【2】上場株式の譲渡損失の損益通算とは?

損益通算とは、ある所得の損失を他の所得の利益と相殺することによって、全体の所得金額を減少させることができる制度です。また、上場株式の譲渡損失は、同じ年に発生した特定の所得のみと損益通算することができます。

上記により、譲渡損失を譲渡益と相殺することで、その年の課税対象となる所得を減らすことが可能です。

 

  • 損益通算ができる対象

上場株式の譲渡損失は、以下のような所得と損益通算が可能です。

・上場株式の譲渡益: 同じ年に他の上場株式取引で得た譲渡益と通算可能です。

・投資信託の譲渡益: 投資信託の譲渡による利益と損益通算できます。

・株式配当金: 申告分離課税を選択している場合、上場株式の配当金と損益通算できます。

※株式や投資信託以外の所得(給与所得、不動産所得など)とは損益通算できません。

 

2023年にA社の株式を売却して50万円の損失が発生し、同じ年にB社の株式を売却して70万円の利益が発生した場合、この損失と利益を損益通算することで、課税対象となる譲渡益は20万円となります。

 

【3】上場株式の譲渡損失の繰越控除とは?

繰越控除とは、その年に損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度です。繰り越した翌年度以降の上場株式や投資信託の譲渡益と相殺することができます。

注意点として、繰越控除を受けるためには、損失が発生した年に確定申告を行い、繰越損失を申告する必要があります。また、翌年以後3年間は毎年確定申告をしなければなりません。株式を売却しなかった年についても、確定申告が必要ですのでご留意ください。(特定口座で源泉徴収ありを選択している場合でも、繰越控除を受けるには確定申告が必要です。)

 

2023年に100万円の譲渡損失が発生し、2024年に50万円の譲渡益が発生した場合、2023年の損失を2024年に繰り越して相殺することで、2024年の譲渡益に対する課税額をゼロにすることができます。

そして、残りの50万円の損失はさらに2025年に繰り越すことができます。

 

このように、株式取引で発生した損失は、適切に繰越控除を行うことで、将来の利益に対する税負担を軽減することが可能です。

 

—————————————————————–

ご不明な点ございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。

 

交際費等の損金不算入制度の変更について

今回は2024年度の税制改正を踏まえて、法人における交際費等の経費の取り扱いについて紹介します。


1.交際費とは
法人にとって、交際費、いわゆる接待に使った費用が損金算入される(=経費となる)ことは一般的に知られていることかと思いますが、現在の税法上では交際費は原則的に損金算入しないこととされています。

政府には税金を公平に徴収したい、そのため使途が明確でない交際費は経費とすべきでないという言い分があり、一方で経済界には、交際費は事業の運営上必要なものだから経費とされて然るべきという言い分があり、その両者の対立が背景となり、1954年に交際費を損金算入することに初めて制限が設けられ、以降企業の規模や、交際費の金額の多寡によって、何度も調整がなされてきました。

2024年の改正前までは、損金算入しないという原則の上で
①一人あたり5,000円以下の飲食費等は、交際費には含めない
②中小法人以外は飲食費等の50%を、中小法人は飲食費等の50%か年800万円までのどちらか有利な金額まで損金算入できる
という2つの特例措置が設けられていました。

2.2024年度の改正概要
今回の改正では、上記の特例措置のうち、①の金額が変更となりました。
2024年4月1日以後は、一人あたり10,000円以下の飲食費等は、交際費には含めないこととされます。

物価の上昇への対応や、コロナウイルスによってダメージの大きかった飲食店の需要を抑制しないことが、狙いとなっているようです。

また、こちらは税制改正による変更はありませんが、限度額内の飲食費等を交際費に含めないために、帳簿書類に金額や支出した年月日の他、参加した得意先や関係者名、参加した人数を記録しておく必要があります。

税制改正と物価高を踏まえて、交際費の社内ルールの見直しを行ってみるのもよいかもしれません。
飲食店経営事業者の方はメニューの価格改定を行ってみるのはいかがでしょうか。


ご不明な点ございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。