投稿者: SOLARIA-STAFF

従業員賞与について

従業員賞与について

夏や冬に支給されることが多い「賞与(ボーナス)」。従業員にとっては大きな楽しみである一方、支給する会社側にとっては税務処理を正しく行う必要のある、意外と論点の多いテーマです。

以前のコラムでは役員賞与を取り上げましたが、今回は従業員に対する賞与について解説いたします。

1.従業員賞与と役員賞与の違い

役員賞与は、原則として損金※に算入されません。損金に算入したい場合は、事前確定届出給与の届出などいくつかの要件を守る必要があります。

一方、従業員に支給する賞与は、原則としてそのまま損金となります。会社の業績や貢献度に応じて柔軟に支給できることが、大きな違いです。

※損金・・・法人税の計算において収益から差し引くことができる費用や損失のこと

2.賞与にかかる所得税 ~毎月の給与とは計算方法が違う~

賞与は給与所得に該当するため、支給時に所得税の源泉徴収が必要です。

毎月の給与と異なるのは、賞与では「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いる点です。具体的には、前月の給与額(社会保険料控除後)と扶養親族等の数をもとに税率を求め、その税率を賞与額(社会保険料控除後)に乗じて所得税を算定します。

ただし、賞与も給与の一部として源泉徴収簿や賃金台帳に記載されます。年末調整の対象となる従業員については、1年間の給与および賞与の総額をもとに年間の所得税額を計算し、毎月の給与や賞与から源泉徴収した税額との過不足が年末調整で精算されます。

3.決算賞与の損金算入時期

賞与は原則として、その支払いが行なわれた日の属する事業年度に損金算入を認めることとされています。しかし、決算期に会社の利益が想定より大きくなった際、「決算賞与を出して、従業員へ還元しつつ法人税の負担も抑えたいが、支払いが間に合うだろうか」と考えることもあるのではないでしょうか。以下の3要件を満たすことで未払でも損金に算入することができます。

(1)決算日までに、支給対象者ごとの支給額を通知していること

(2)通知した金額を、決算日後1か月以内に全額支給すること

(3)通知した事業年度に未払金として損金経理していること

要件を欠くと、翌期の損金となってしまいます。「決算月直前に思い立ったが要件を満たさず断念」とならないために、決算を意識しはじめた段階での早めのご相談をいただければ幸いです。

4.要注意のケース:未払賞与と賞与規定

賞与について就業規則等で「支給時期に在職していない場合は賞与を支給しない」としている場合、賞与の支給は支給日にならないと確定しない、ということになります。したがって、社内規定に上記記載がある場合は先述の3(1)支給額の通知を満たせないということになり未払賞与の損金算入ができません(法人税法基本通達9-2-43)。

逆に、賞与の支給対象期間に在職していた従業員は、支給日前に退職したとしても支給を受けることができる旨の規定があれば、支給対象期間の経過により賞与が確定するため、3.の3要件を満たせば、未払賞与の損金算入は認められます。

賞与制度の見直しや決算賞与の検討をされる際には、支給前の段階から税理士へご相談いただくことで、税務上のリスクを抑えつつ、会社と従業員の双方にとって良い形での支給が可能となります。お気軽にお問い合わせください。

不動産小口化商品に関する令和8年度税制改正

令和8年度税制改正にて、相続税の不動産評価における大きな影響のある改正がありました。特に影響のある不動産小口化商品を中心に、改正の内容とその影響についてご説明します。

不動産小口化商品とは
不動産小口化商品とは、賃貸用不動産を、持分を細かく分割して1口100万や1,000万円などの少額にして販売し、その賃料収入等は投資額に応じて分配する商品です。通常、相続の節税策や分割策として活用されてきました。

2. 改正のポイント
令和8年度税制改正により、任意組合型・信託受益権型の不動産小口化商品について、 相続税・贈与税の評価方法が「路線価評価」から「通常の取引価額(実勢価格)」へ変更されます。
これにより、従来のような大幅な評価圧縮による節税効果はほぼ消滅します。
適用開始:令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与から適用

3. 改正前の評価方法
不動産小口化商品は、従来はその他の不動産と同様の評価でした。
それにより、場所等により大きく異なるものの、70-80%購入価額よりも減額されることも多く、極めて節税効果が高いものでした。

4. 改正後の評価方法
令和8年度改正により、以下のように評価方法が変更されます。
(1)通常の取引価額による評価
以下の価格を参考に「通常の取引価額」を算定します。
事業者が示す適正な処分価格・買取価格
事業者が把握する売買実例価額
定期報告書等に記載された不動産価格

(2)上記がない場合の評価
取得価額の80%で評価(貸付用不動産の評価方法に準じる)

(3)対象となる商品
任意組合型
信託受益権型(信託型)

※匿名組合型は従来から時価評価のため影響なし。

5. 改正による影響

(1)節税効果の消滅
従来:1口1,000万円 → 評価200万円
改正後:1口1,000万円 → 評価800万円(取得価額の80%)
(2)既存保有者も対象
取得時期に関係なく、2027年以降の相続・贈与では改正後の評価。

6. 2026年中に検討すべき対策
2026年12月31日までの贈与は従来評価が適用されます。よって今年中に生前贈与すれば、低い評価で計算することができます。

7. まとめ
来年より、不動産小口化商品の相続税・贈与税評価が 実勢価格ベース に変更されます。それにより、節税スキームとしての利用は 大きく効果が下がる見込みです。

2027年以降は評価圧縮ができないため、既に所有されている方、購入を検討されている方は、相続対策等として適切かどうか判断の見直しが急務です。専門家にご相談のうえ、その将来の影響をよく検討し、必要な対策を立てましょう。

生前贈与と相続について

相続対策についてご相談を受ける中で、よく聞かれるのが
「生前贈与と相続、どちらが得なのか」
というご質問です。

「今のうちに子どもへ財産を渡すべきか」

「贈与しなくても相続で十分なのか」

「結局どちらが節税になるのか」

といった悩みをお持ちの方は少なくありません。近年は相続税の課税対象も拡大していることから、「とりあえず贈与しておこう」と考える方も増えています。

しかし、生前贈与と相続のどちらが有利かは、資産の内容や家族構成によって変わるため、一概には判断できません。本記事では、それぞれが有効に働くケースを解説します。

 

1. 生前贈与が有効なケース

1.1 値上がり資産を保有している場合

将来値上がりする可能性のある資産がある場合は、「相続時精算課税制度」の活用が有効となることがあります。この制度は、年間110万円の基礎控除に加え、最大2,500万円まで贈与税が非課税となる一方、相続時に贈与財産(年間110万円以下の贈与分を除く)を合算して精算する仕組みです。

一見すると単なる課税の先送りですが、効果を発揮するのが値上がり資産です。例えば、現在1,000万円の株式が将来3,000万円に上昇した場合、何も対策せず相続すると3,000万円で課税されます。一方、事前に精算課税で贈与しておけば、相続時に加算されるのは贈与時の1,000万円のみとなり、2,000万円分の値上がり益は課税対象外となります。このように、評価が低いうちに移転することで税負担を抑えられることがあります。

 

1.2 特定の非課税制度を利用できる場合

一定の要件を満たす場合、贈与時に非課税となる制度もあります。例えば、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与は最大1,000万円(条件により500万円)まで非課税となります。

また、結婚・子育て資金の一括贈与についても最大1,000万円(結婚に際して支払う金銭については、300万円が限度) まで非課税となる制度があります。

ただし、いずれも要件が細かく、契約や使途管理が必要となるため、事前確認が重要です。

 

2. 相続が有利なケース

2.1 相続人が多い場合

相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)があり、この範囲内であれば相続税の負担が生じないこととなります。また相続税は、課税遺産総額を法定相続分で按分した金額に税率を適用して算出するため、相続人の人数等によっては税負担が相対的に抑えられる場合があります。

 

2.2 配偶者が相続する場合

配偶者には特例があり、法定相続分または1億6,000万円までは相続税がかからない取扱いとされています。そのため、配偶者への相続は税負担上有利となるケースが多い一方、二次相続まで見据えた分割や遺産構成の検討が必要となることがあります。

 

3. まとめ

生前贈与と相続は、それぞれ異なるメリットを持ち、どちらが有利かは状況によって異なります。重要なのは一方を選ぶことではなく、各制度の適用要件や将来の見通しを踏まえて組み合わせを検討することです。実務では、値上がりが見込まれる資産は生前贈与で移転し、不動産などは相続時の特例を活用するといった形で使い分けるケースが一般的です。

相続対策は財産の内容や家族構成によって最適な方法が大きく変わります。具体的な対策については、ぜひお気軽に弊所までご相談ください。

医療費控除・セルフメディケーション税制について 

医療費控除・セルフメディケーション税制について 

4月になり、令和7年度確定申告の振替納税も完了し、一息ついている方も多いと思います。「今回も無事に終わった」という安堵感とともに、納税額を見て「もう少し節税できないか……」と思いを巡らせている方もいるのではないでしょうか。 

医療費は、積もれば思ったよりも合計額が高くなる出費だと思いますが、お客様の中には「うちは医療費の合計が10万円もいかないから関係ない」「いつも同じ薬を買っているだけだから大した額ではない」と、早々に検討リストから外してしまっているケースが見受けられます。医療費控除が対象外でも、ドラッグストア等でよく購入される場合、セルフメディケーション税制が対象になる場合もございます。 

そこで今回は、医療費控除とセルフメディケーション税制について解説します。  

〈医療費控除〉 

 自分や家族のために1年間に支払った医療費の合計額が10万円を超える場合、超えた分の金額を所得から差し引くことができる。(所得200万円未満は所得の5%を超えた分) 

    医療費控除 : (医療費合計 – 保険金等の補填額) – 10万円 

(対象となるもの) 

1.治療に不可欠であるもの  

 病気や体調不良による診療は前提として、不妊治療や人工授精にかかる直接的な治療の費用に関しても保険適用内は勿論、保険外の先進医療分も対象になります。また、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などによるマッサージも、疲れを癒すリラクゼーションではなく、「治療のための施術」であれば対象です。  

 また、ドラッグストアで購入した医薬品や包帯等も、治療に必要であったなら対象です。ただし、栄養補給や健康増進目的のビタミン剤等は対象外です。  

2. 通院にかかる交通費  

公共交通機関(電車・バス)の利用代金は控除対象になりますが、領収書がなくても家計簿やメモ、経路検索の記録があれば申告が可能です。そして通院をする当人だけでなく、患者1人の通院が困難な場合(子供や高齢者など)の付添人の交通費も申告可能です。また、急病や深夜などでやむを得ずタクシーを利用した場合も、その理由が正当であれば認められます。  

ただし、自家用車のガソリン代や駐車場代は、原則として対象外である点に注意が必要です。  

3.介護保険サービスの医療費  

ご家族に介護が必要な方がいる場合、ケアプランに含まれる訪問看護やリハビリ、介護老人保健施設の利用料などは、その一部(または全部)が医療費控除の対象になります。 

領収書に「医療費控除の対象となる金額」が明記されているはずですので、ご家族に介護保険サービスを受けていらっしゃる方がいる方は今一度チェックしてみてください。  

4.おむつ代と「おむつ使用証明書」  

6ヶ月以上寝たきりの状態で、医師の治療を継続して行う必要があるという2つの条件を満たすと医師が発行する「おむつ使用証明書」というものがあれば、大人用おむつの購入費用も控除対象になります。2年目以降は、市町村が発行する書類で代用できるケースもあり、継続的な負担軽減に繋がります。購入をされている方は購入費用の領収書と、その使用証明書を保管しておくことをお勧めします。  

 

〈セルフメディケーション税制〉 

 ドラッグストア等で特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)を年間12,000円超購入した際に、超えた分を所得から差し引きすることができる。ただし、上限は88,000円。 

 セルフメディケーション税制 : 対象の市販薬合計 – 1.2万円 

 毎年医療費が10万円以下であると、医療費控除を使えないため諦めてしまいがちですが、ドラッグストアで医薬品の購入もよくしているという人は、セルフメディケーション税制があるという選択肢を視野に入れてみても良いかもしれません。1年間で何があるか分からないので、とりあえず領収書を別々の封筒に分けて、保管することから始めてみるのをお勧めいたします。  

 ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないので、どちらの制度を使用したほうが良いか判断が必要です。 

確定申告に関して個別・具体的なご相談につきましては、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。  

 

会社にいる動物をどこまで経費にできるのか

働き方や福利厚生の多様化が進む現代において、ペットやその他の動物が職場にいるケースも増えてきていると思います。
会社が動物を飼育・維持するために支出する費用が、税務上どこまで経費として認められるのかについて、考えていこうと思います。

会社のペットの飼育費が経費として認められるかどうかの判断基準は、その費用が事業の売上を得るために直接必要な支出であるかどうか、つまり事業関連性が認められるかという点です。
そのため、個人的なものや愛玩目的と判断される場合には、経費になりません。

では、具体的にどのような場合に経費として認められるのでしょうか。
まずペット関連事業の場合は、飼育にかかる費用全般が経費として計上可能です。
猫カフェやフクロウカフェなどのコンセプトカフェ、ペットショップでは、動物は備品や商品であり、売上を生み出すための事業用資産そのものであるため、単なる愛玩目的とは区別され、費用計上が可能になります。
ただしこのような場合であっても、経費として認められるのは、事業と関係している動物に関してのみなので、例えば自宅で飼っている動物がいたとしても、その費用は経費計上できません。
ここまでは動物が明確に収益に寄与する事例を取り上げました。

他にも形を変えて収益に貢献するケースがありますのでご紹介いたします。
1.広告塔、マスコット
会社のHPやSNSに頻繁に登場し、会社のシンボルや広報活動としての役割がある場合。
2.受付、警備目的
応接間や受付に設置された熱帯魚など、来客の印象向上に寄与する場合や、防犯目的の番犬として活用される場合。
3.社員の福利厚生目的
職場にペットがいることで癒やしを提供しており、また社員のモチベーションを高めることで業務効率化に繋がっている場合。先述の2つに比べると、より対内的・主観的であるため、福利厚生規定への明記など、より強固な証拠が必要です。

ただし、いずれも企業のイメージアップや社員のモチベーション向上など、抽象的な貢献なため、客観的な売上貢献を証明することが難しいと考えられます。
上記のような抽象的な貢献の場合には、事業への貢献度をできるだけ客観的な数値に置き換えることが大事になってきます。
例えば福利厚生目的で動物が社内にいる場合には、動物導入後の従業員の満足度アンケートやストレスチェックの結果を実施する等、福利厚生としての効果を裏付ける記録があると良いかもしれません。

なお、コンセプトカフェなどの動物を扱う業種では、動物関連費用の経費性は容易に認められますが、その減価償却が興味深い論点になります。
動物を固定資産に計上する場合、生物という固定資産の区分になります。
動物ごとに耐用年数が定められており、例えば犬や猫であれば、耐用年数は8年です。
つまり、犬や猫の場合には、この8年という耐用年数を根拠に、動物の取得原価を減価償却費として経費計上していくことになります。
動物のような命ある存在を、その耐用年数といういわば寿命でもって資産の価値が減っていくと捉える会計処理は、動物が事業に貢献する期間にわたって公平に費用を配分していくという面で合理的なのです。

今回は会社における動物関連費用の経費計上という、非常に興味深く、かつ線引きが難しいテーマについて深く考察しました。
会社にいる愛らしい動物たちが経費として認められるかどうかの判断は、彼らがもたらす癒しという抽象的な価値ではなく、事業にどれだけ貢献しているかというルールに委ねられています。
動物関連費用の経費計上は、事業関連性の判断が非常に難しい分野です。
判断に迷われた際は、ぜひ税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

令和7年度年末調整の改正点について

年末調整の時期が近づき、勤務先から年末調整の書類の提出を求められる方も多いのではないでしょうか。今年度の年末調整は、税制改正により昨年と比べて変更点がいくつかあります。今回は、令和7年度の年末調整の改正内容について紹介します。

※これらの改正は原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます。

 

  1. 基礎控除と給与所得控除の見直し

・基礎控除額について
控除額が48万円から58万円に引き上げられた上、合計所得金額に応じて段階的に控除額が

変化します。


・給与所得控除額
55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。

  1. 「特定親族特定控除」の新設

所得者に特定親族(※)がいる場合、その特定親族の合計所得金額に応じて一定の金額を控除する特定親族特別控除が新設されました。

なお、この適用を受ける場合は、給与の支払者に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。

※特定親族とは、簡単にいうと、大学生年代でアルバイトによりそれなりの所得がある子どもです。具体的には、所得者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円~123万円以下(給与収入の場合188万円以下)の人をいいます。親族の合計所得金額が58万円以下の場合は特定親族特別控除の対象にはなりませんが、扶養控除の対象(控除額63万円)となります。

  1. 扶養親族等の所得要件の引き上げ

基礎控除の改正に伴い、扶養親族等の所得要件が改正されました。
学生、パート勤務の配偶者、年金受給者の方が新たに扶養対象となる可能性あります。

以上が令和7年度の年末調整の主な改正点になります。

改正により控除を受けられる範囲が広がっていますので、内容をしっかり整理したうえで

手続きを進めていきましょう。

 

名義預金とは何か? 税務署が注目する“家族間のお金”の実態

◆なぜ今「名義預金」が注目されるのか

近年、相続税の課税対象者が増加する中で、税務署が特に注目しているのが「現金・預貯金」の申告漏れです。中でも、形式上は家族名義であっても、実質的には被相続人の財産である「名義預金」は、税務調査で頻繁に指摘される項目です。家族間の信頼関係に基づく資金管理が、税務上は“贈与未成立”と判断されることもあり、相続税の課税財産の対象となる場合がございます。

 

◆名義預金とは何か

名義預金とは、通帳の名義人と実質的な所有者が異なる預金を指します。たとえば、親が子供名義で口座を開設し、そこに自身の資金を入金するケース。あるいは、夫の収入を妻名義の口座で管理するケースなどが典型です。名義人が預金の存在や金額を認識しておらず、管理もしていない場合、税務署はその預金を「実質的には被相続人の財産」とみなします。

 

◆税務署が名義預金と判断する基準

税務署は、以下のような観点から名義預金か否かを判断します:

  • 資金の出所:預金が誰の収入や財産から形成されたか。
  • 管理実態:通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管・使用していたか。
  • 名義人の認識:名義人が預金の存在・金額を把握していたか。
  • 贈与の意思表示:贈与契約書の有無、贈与税申告の履歴など。

これらの要素を総合的に勘案し、「形式より実態」で判断されます。

税務署に名義預金ではなく贈与として認定されるよう、名義人が通帳やキャッシュカードを保管する、贈与税申告書を作成するなど、贈与の成立を証明できる実態と書面の整備が不可欠です。

 

◆最新裁決事例の紹介

令和5年の裁決事例では、孫名義の口座に祖父が定期的に入金していたケースが争点となりました。税務署は「贈与の意思表示がなく、孫が預金の存在を認識していなかった」として、名義預金と判断。結果として、祖父の相続財産に加算され、追加納税が発生しました。実務では、「贈与の実態を証明できるか」が分かれ目となります。

 

名義預金は、家族間の信頼や慣習に基づく資金管理が、税務上は否認されるリスクを孕んでいます。形式だけでなく、実態を整えることが重要です。贈与は“契約”であり、証拠が必要です。相続税対策として預金を分散する際は、税務署の視点を意識した対応を心がけましょう。

ご不明点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

副業収入がある人は確定申告が必要?

最近では、スキルアップや収入の補填を目的に、会社員でも副業を始める方が増えています。そんな中、「副業収入は確定申告が必要なの?」「会社にばれるのでは?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、確定申告が必要となる基準や、副業の所得区分(雑所得・事業所得)の違い、申告することで得られるメリット、注意点について、わかりやすく解説します。 

 

1.副業収入の確定申告は「所得」が20万円を超えるかがポイント 

給与所得者(会社員など)が副業をしている場合、副業による所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。ここでいう「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。たとえば、副業で40万円の売上があり、経費が30万円かかった場合、所得は10万円となり、確定申告は不要です。ただし、確定申告が不要でも、住民税の申告は所得の金額に関わらず黒字である限りは申告が必要なこと、そしてインボイス登録をしている場合には赤字であっても消費税の申告が必要なことにご注意ください。さらに、医療費控除やふるさと納税などの控除を受けたい場合も申告が必要です。 

 

2.雑所得と事業所得の違いとは? 

副業の所得は「雑所得」または「事業所得」に分類されます。分類によって申告方法や控除の適用範囲が異なるため、正しく判断することが重要です。 

  • 雑所得とは?

本業とは別に、継続性がなく、規模が小さい副収入に該当します。 

例:会社員が休日にライティングをして原稿料を得ている 

シェアリングエコノミー(Airbnb、Uberなど)で収入を得ているが、規模が小さい 

単発の講演料やセミナー報酬 

  • 事業所得とは?

反復継続的に事業として行っている収入に該当します。 

例:開業届を提出し、フリーランスとしてWeb制作を受注 

ネットショップを運営し、商品を継続的に販売 

複数のクライアントから定期的に業務委託を受けている 

 

  • 判定のポイント

収入が「事業所得」として認められるためには、営利性・継続性・独立性・設備や帳簿書類の有無など、いくつかの要素を総合的に見て事業として認識される規模で行われているかどうかを判断されます。 

たとえば、利益を得る目的が明確で、継続的に業務を行っている場合は、営利性・継続性があると判断されます。また、雇用契約ではなく、自らの責任で業務を遂行している場合は独立性があるとされます。さらに、パソコンや事務所などの設備を使って業務を行っている場合は、事業としての物的基盤があると評価されます。 

収入規模も判断材料の一つで、年間300万円以上の収入がある場合は、事業所得と認定されやすくなる傾向があります。 

 

3.青色申告のメリット(事業所得の場合) 

副業が「事業所得」に該当する場合、青色申告を選択することで以下のようなメリットがあります。 

・青色申告特別控除 

複式簿記で帳簿をつけ、期限内に申告すれば最大65万円の控除が受けられます。 

・損益通算が可能 

事業で赤字が出た場合、給与所得など他の所得と合算して税額を減らすことができます。 

・赤字の繰越・繰戻し 

赤字を最大3年間繰り越して、翌年以降の所得から控除できます。 

・専従者給与の経費化 

家族に支払う給与も、一定の条件を満たせば経費として認められます。 

 

青色申告をするには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」と「開業届」の提出が必要です。副業開始から2ヶ月以内の提出が原則となりますので、早めの準備が大切です。 

 

4.副業が会社にばれる可能性は? 

副業をしていることが会社に知られる可能性があるのは、住民税の通知がきっかけになるケースです。会社員の場合、住民税は「特別徴収(会社が給与から天引き)」されるのが一般的ですが、副業収入を申告すると、住民税額が増加し、会社に通知される住民税額が通常より高くなることで、副業が発覚することがあります。これを避けたい場合は、確定申告時に「住民税の納付方法を『普通徴収(自分で納付)』にする」ことで、会社に副業分の住民税が通知されないようにすることが可能です。 

 

5.申告しないとどうなる?ペナルティに注意 

副業収入が20万円を超えているにもかかわらず申告を怠ると、以下のようなペナルティが課される可能性があります。 

・無申告加算税 

・延滞税 

・税務調査による追徴課税 

副業を始めたばかりで不安な方も、領収書やレシートを保管しておき、申告時期に税理士へ相談することで安心して申告ができます。 

 

6.まとめ 

副業を始めたら、まずは「所得が20万円を超えるかどうか」「副業の内容が雑所得か事業所得か」を確認しましょう。事業所得として申告できれば、節税のメリットも大きくなります。 

確定申告は難しそうに見えますが、正しい知識と準備があればスムーズに行えます。迷ったら、税理士に相談するのもおすすめです。 

ふるさと納税ポイント制度の改正について

ふるさと納税ポイント制度の改正について 

 ふるさと納税制度は、自治体への寄付を通じてその寄付額の⼀部が所得税と住⺠税から控除される制度です。これまでは寄付額に応じたポイント付与が行われてきましたが、このポイント制度が2025101日より廃止されることになりました。「さとふる」や「ふるさとチョイス」などのポータルサイトを通じて、寄付先や返礼品を選ばれる方も多いかと思いますので、今回はふるさと納税ポイント制度の改正についてご紹介いたします。 

 

1. 202510月からのポイント制度廃止

1.1. 廃止の概要と目的 

 総務省は、20246月の方針に基づき、2025101日からふるさと納税ポータルサイトにおける ポイント付与を全面的に廃止します。この目的は、ふるさと納税が「寄付」という本来の趣旨から逸脱し、 ポイント還元による「お得感」が先行している現状を是正し、制度の健全な運用を促すことにあります。

 ※寄附に伴いポイント等の付与を⾏う者を通じた募集を禁⽌する方針 

1.2. 寄付者への影響 

 ポイント廃止後は、寄付者はポイントによるメリットがなくなるため、返礼品の内容や自治体の取り組み、寄付金の使途など、より本質的な要素を重視して寄付先を選ぶようになることが見込まれています。 

 

2. 202310月の制度改正(補足)

 2025年のポイント制度廃止に先立ち、202310月にも制度改正が行われています。 

こちらは以前に弊所でも取り上げた内容となりますので、詳しくは下記URLをご参照ください。 

https://sol-aria.com/blog/20230925/ 

 

3. 今後のふるさと納税の利用について

3.1. 寄付者が今後注意すべき点 

 ポイント制度廃止後は、返礼品そのものの魅力や、寄付金の使途への共感がより重要になります。また、 202310月の改正により、返礼品の種類や寄付金額にも変化が生じているため、最新の情報を確認する ことが不可欠です。 

3.2. 制度の健全な発展に向けて 

 今回の改正は、ふるさと納税制度が本来の目的である「地方創生」に立ち返り、より持続可能な形で発展していくための重要な一歩です。寄付者、自治体、ポータルサイトそれぞれが制度の趣旨を理解し、適切な運用に努めることで、ふるさと納税は今後も日本の地域活性化に貢献していくことが期待されます。 

 

4. おわりに

 ふるさと納税制度は、地域を応援する有効な手段として定着しています。今回のポイント制度廃止や過去の改正は、制度の透明性と公平性を高め、より多くの人々が安心して利用できる環境を整備するためのものです。今後も制度の動向に注目し、賢く活用していくことが大切です。 

役員賞与について

7月は多くの企業の賞与支給月です。しかし、役員の賞与は、原則、法人の経費にはなりません。そのため、役員の賞与を諦めている社長さんもいるかもしれません。今回は、役員賞与を法人の経費にする、事前確定届出給与の制度を紹介いたします。

・事前確定届出給与とは
事前確定届出給与とは、支払金額・支払日を定められた期間内に所轄税務署に届け出ることで定期同額給与とは別に経費として認める制度です。

・通常の役員報酬
通常、役員報酬は毎月同額を1年間継続して支給する(定期同額給与)か、決められた基準に従い毎月支払う(業績連動給与)方法のどちらかです。大半の法人では定期同額給与のみです。
定期同額給与の場合、例えば、年の途中で大きなプロジェクト成功により大幅な増収が発生するかもしれないときに、それを見越して毎月の給与を高く設定していた場合、プロジェクト失敗により売上がないときも、その高い給与を継続させる必要があります(※経営が傾くほどの影響があった場合等は除く)。

・事前確定届出給与の活用方法
上記のように、年の途中に不確かながら大きな影響のある出来事が予想される場合、事前確定届出給与が活用できます。
例えば、9月にそのプロジェクトの成否が予想される場合に、定期同額給与は例年通りの金額で設定し、11月に事前確定届出給与により役員賞与を設定しておきます。それにより、9月にプロジェクトが成功すれば予定通り賞与を支払い、逆にプロジェクトが失敗だった場合には、賞与の支払いを取りやめることができます。
また、業種として資金繰りが非常に厳しい時期と余裕がある時期が決まっている場合にも、定期同額給与を低めに抑えつつ、資金繰りに余裕がある時期に事前確定届出給与を設定しておく、という方法もあります。

・事前確定届出給与の注意点
① 届け出を行う期限があり、期限内に所定の届け出を必ず行わなければなりません。
② 支給額を届出の金額から変更できません。
例えば100万円で届け出たのであれば、80万円もしくは120万円どちらで支給した場合でも、その支給額全額が経費として認められません。
支給できる金額は届出どおりの100万円か0円かになります。経費として認められない場合、法人は法人税がかかるうえ、役員本人は所得税が課せられるため、よいことがありません。
③ 支給日は、基本的に届出の通りにする必要があります。ただし、合理的な範囲内であれば、ピッタリ届出日の通りでなくとも認められる可能性があります。

事前確定届出給与は、経営のリスクに応じて設定することで、より柔軟な経営計画を立てることができます。細かい要件や注意事項等をよく税理士と相談のうえ、検討したいですね。