私たちは日本で生活をしていく中で様々な税金を払っています。中でも特に身近に感じるのは「消費税」ではないでしょうか。物やサービスを購入する際には消費税を加えた料金を支払い、それはレシートにも明記されるため、多くの方が「消費税は消費者が払っている」と認識しています。では「企業は消費税を払っていない」のでしょうか。
今回は、そのような消費税の仕組みと、誤解されがちな実態、さらに制度の影響について考えてみたいと思います。
- 消費税の基本的な仕組み
消費税は、納税者と負担者が異なる「間接税」に分類され、消費者(=負担者)が支払った消費税を企業(=納税者)が一時的に預かり、決められた期間ごとに税務署に納める、という仕組みになっています。
ただし、企業は受け取った消費税をそのまま納めるわけではありません。実際には、企業が仕入れ時に支払った消費税は控除され、納税するのは「預かった消費税 - 支払った消費税」の額となります。これを「仕入税額控除」といいます。
2. 企業は消費税を払っていない?
消費税の負担者は消費者ですが、消費税の一部、あるいは全部を肩代わりしている企業が少なくありません。その原因としては価格競争や取引先との力関係で、税込価格を維持せざるを得ない状況であることが挙げられます。
そうなると制度上は消費者が払う税金であっても、実際には企業の利益が削られてしまうことになります。
例:1万円の商品やサービス → 本来は税込11,000円にすべき
「税込1万円でお願いします」と言われる → 消費税分(1,000円)を自己負担
3. インボイス制度
2023年に導入された「インボイス制度」も、この問題をより複雑にしました。
インボイス制度とは、事業者が仕入税額控除を適用するためには、登録事業者が発行する適格請求書(インボイス)を受け取る必要がある、という制度です。今までは売上が少ないことで納税を免除されていた事業者も、適格請求書を交付できるよう税務署に対して事業者登録を行うためには課税事業者になる必要があります。
インボイス制度により、一部の免税事業者は取引の相手から「登録しないと取引できないが値上げはできない」と圧力を受け、上記2で例示のように課税事業者となったうえで消費税相当分を自己負担とせざるを得ない状況に追い込まれています。
4. 消費税は公平な税か?
政府は消費税を「広く薄く、安定的に徴収できる税」として評価しています。また、少子高齢化社会において、年金・医療などの社会保障費を支える財源として、今後ますます重要になるとも言われています。
ただ消費税は、所得の低い人ほど、収入に対して大きな負担を強いられ、年収1000万円の人も年収200万円の人も、同じ10%の消費税を払うのは一見公平に見えて、実際には所得が少ないほど打撃が大きいです。
消費税は消費者が払っているようでいて、現実には企業や事業者が負担していることも多く、そうした企業の負担となっています。また消費者の立場に立っても、所得の低い人ほど収入に対して大きな負担となります。
今後、消費税率の引き上げや制度変更が議論される中で、こうした実態を正しく理解し、単なる「数字の話」ではなく「誰がどのように負担しているのか」を意識することが、私たち一人ひとりに求められているのではないでしょうか。
消費税についての相談があればお問合せください。