上場株式の売却損が生じた場合に活用できる「損益通算」と「繰越控除」について

今月、日経平均株価が「歴史的な乱高下」をしたことで市場が騒然としました。もし、上場株式の譲渡損が出た場合に、所得税で活用できる制度についてご紹介いたします。

 

【1】概要

上場株式を売却して損した場合、利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」という特例があります。

 

【2】上場株式の譲渡損失の損益通算とは?

損益通算とは、ある所得の損失を他の所得の利益と相殺することによって、全体の所得金額を減少させることができる制度です。また、上場株式の譲渡損失は、同じ年に発生した特定の所得のみと損益通算することができます。

上記により、譲渡損失を譲渡益と相殺することで、その年の課税対象となる所得を減らすことが可能です。

 

  • 損益通算ができる対象

上場株式の譲渡損失は、以下のような所得と損益通算が可能です。

・上場株式の譲渡益: 同じ年に他の上場株式取引で得た譲渡益と通算可能です。

・投資信託の譲渡益: 投資信託の譲渡による利益と損益通算できます。

・株式配当金: 申告分離課税を選択している場合、上場株式の配当金と損益通算できます。

※株式や投資信託以外の所得(給与所得、不動産所得など)とは損益通算できません。

 

2023年にA社の株式を売却して50万円の損失が発生し、同じ年にB社の株式を売却して70万円の利益が発生した場合、この損失と利益を損益通算することで、課税対象となる譲渡益は20万円となります。

 

【3】上場株式の譲渡損失の繰越控除とは?

繰越控除とは、その年に損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度です。繰り越した翌年度以降の上場株式や投資信託の譲渡益と相殺することができます。

注意点として、繰越控除を受けるためには、損失が発生した年に確定申告を行い、繰越損失を申告する必要があります。また、翌年以後3年間は毎年確定申告をしなければなりません。株式を売却しなかった年についても、確定申告が必要ですのでご留意ください。(特定口座で源泉徴収ありを選択している場合でも、繰越控除を受けるには確定申告が必要です。)

 

2023年に100万円の譲渡損失が発生し、2024年に50万円の譲渡益が発生した場合、2023年の損失を2024年に繰り越して相殺することで、2024年の譲渡益に対する課税額をゼロにすることができます。

そして、残りの50万円の損失はさらに2025年に繰り越すことができます。

 

このように、株式取引で発生した損失は、適切に繰越控除を行うことで、将来の利益に対する税負担を軽減することが可能です。

 

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