NISAとiDeCo ― 税制改正でさらに使いやすく

① なぜ今、NISAとiDeCoなのか 

「老後2,000万円問題」が話題になって以来、「自分で資産を育てること」への関心は年々高まっています。先が見通せない時代だからこそ、多くの方が投資に目を向けるようになりました。 

 そんな中で注目したいのが、国が用意した2つの税制優遇制度「NISA(ニーサ)」と「iDeCo(イデコ)」です。この2つですが、制度の見直しが進んでおり、内容が変わってきています。 

 今回は、両制度の基本から税務メリット、改正点、そして「どちらを選ぶべきか」までを整理します。 

  

② そもそもNISA・iDeCoとは? 

税務メリットの話に入る前に、「そもそもこの2つは何なのか」の概要を解説します。 

  ■ NISAとは 

NISAは正式には「少額投資非課税制度」といい、国が用意した個人向けの税制優遇制度です。通常、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかりますが、NISAでは、株式や投資信託を売って得た利益(運用益)・配当金が非課税になるという仕組みです。 

  

■ iDeCoとは 

iDeCoは正式には「個人型確定拠出年金」といい、国が設けた私的年金制度です。自分で毎月掛金を積み立て、自分で運用先(定期預金・保険・投資信託など)を選び、原則60歳以降に受け取る仕組みです。  

  

③ NISAの税務メリットや特徴 

NISAの最大の魅力は、運用益・配当が非課税になることです。  

たとえば特定口座で投資信託を100万円で買い、120万円で売却すると、20万円の利益に対して約20.315%(約4万円)の税金がかかります。ところがNISA口座で同じ利益が出た場合、この税金は一切かかりません。  

また、現在のNISAには性格の異なる2つの投資枠があり、併用が可能です。  

  

■ つみたて投資枠(年120万円まで) 

旧「つみたてNISA」に近い枠で、金融庁の基準を満たし、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象です。毎月コツコツ積み立てる、投資初心者にも向いた枠です。 

  

■ 成長投資枠(年240万円まで) 

旧「一般NISA」に近い枠で、上場株式や投資信託などを幅広く購入できます。また、海外の株に投資することもできるなど、自由度が高いものとなります。 

この2つを合わせると、年間最大360万円まで非課税で投資できます。 

  

そのほかの枠組みは次のとおりです。  

・生涯非課税限度額:1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) 

・非課税保有期間:無期限 

・売却枠の再利用:売却した分の非課税枠は、翌年以降に再利用可能 

  

加えてNISAのメリットの特徴は「柔軟性」です。後述のiDeCoと違い、保有している商品をいつでも売却して引き出せるため、教育費・住宅資金・急な出費など、あらゆるライフイベントに対応しやすくなります。  

 一方で注意点もあります。後述のiDeCoのような掛金の所得控除はないこと、また、NISA口座で損失が出ても、特定口座の利益との損益通算や、損失の繰越控除はできないことも押さえておきたいところです。  

  

④ iDeCoの税務メリットや特徴 

iDeCoの最大の魅力は、下記の3段階で税制優遇が受けられるという節税力です。 

  

■ 拠出時:掛金が全額所得控除 

毎月の掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。所得が減ることで、その年の所得税と翌年の住民税が軽減されます。  

  

■ 運用時 :運用益が非課税 

通常約20.315%課税される運用益が、iDeCo口座内では非課税です。利益に税金がかからない分、そのまま再投資に回せるため、長期になるほど効果が大きくなりやすいのが特徴です。 

  

■ 受取時:受け取り方に応じた控除 

60歳以降に受け取る際も、一時金なら「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」の対象となり、一定額まで非課税で受け取れます。 

  

注意点は、原則60歳まで引き出せないこと、そして加入時・運用中に口座管理手数料がかかることです。老後まで使わずに置いておける資金で取り組むのが基本です。 

  

⑤ 改正について 

2026年12月から2027年1月にかけて、NISA・iDeCoともに大きく改正されます。 

  

■ NISA(2026年度改正) 

NISAは制度の骨格(非課税枠:年間360万円、総額1,800万円など)はそのままに、利便性を高める見直しが行われる予定です。主な変更点は次のとおりです。 

・18歳未満への「つみたて投資枠」解禁(いわゆる「こどもNISA」) 

・つみたて投資枠の対象商品の拡充(債券型・バランス型などを追加) 

・定期売却サービスの手数料の容認 

・10年ごとの住所確認の廃止 

  

いずれも「制度をより使いやすくする」方向の改正で、既存の枠が縮小されるものではありません。  

なお、「こどもNISA」は2027年1月1日からの開始が予定されており、そのほかの項目も多くが2027年1月以降の実施が見込まれています。ただし、各金融機関での対応時期は今後の発表によるため、お手続きの前に金融庁や各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。 

  

■ iDeCo(2026年12月拠出分~) 

月額の掛金上限の引き上げが行われる予定です。 

  

加入区分  現行(月額)      改正後(月額)       備考 
自営業者など(第1号被保険者)  68,000円  75,000円  国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算した金額 
任意加入被保険者  68,000円  75,000円  国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算した金額 
会社員・公務員(第2号被保険者)  20,000円または23,000円  62,000円  企業年金のある会社員・公務員は、他制度の掛金相当額と合算した金額 
専業主婦(主夫)など(第3号被保険者)  23,000円  23,000円  変更なし 
60歳以上70歳未満の国民年金被保険者以外の方   ―(新設)  62,000円  老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出も実施していない方 

  

また、加入可能年齢が「65歳未満」から「70歳未満」に拡大される予定のため、60歳以降も働き続ける人が、より長く積み立てを続けやすくなります。 

なお、「2026年12月から62,000円」というのは2026年12月拠出分(2027年1月引き落とし)からで、掛金を増やすには金融機関への申請手続きが必要です。期限に間に合わないと翌月以降の適用になる点は要注意です。  

  

⑥ NISAとiDeCoはどちらを優先すべき? 

「結局どっちを優先すればいいの?」という疑問は、多くの人がお持ちだと思います。 

まずは両者を一覧で比較してみましょう。 

  

項目  NISA  iDeCo 
税制メリットの中心  運用益が非課税  掛金が所得控除+運用益非課税(受取時は課税関係あり) 
引き出し  いつでも可  原則60歳まで不可 
向いている目的  教育費・住宅資金も含む中長期の資産形成  老後資金づくりに特化 

  

迷ったときの一つの目安は、「いつのための資産形成か」ということです。 

  

・NISA:いつ使うかはまだ決まっていないけれど、とにかく貯めておきたい方に。使いみちを限定せず、必要になったタイミングで引き出せます。 

・iDeCo:使うのは老後、と決めている方に。60歳まで引き出せない代わりに、所得控除によって同じ金額を貯めるにしても少しでも多く手元に残せる可能性があります。 

 

つまり、使う時期が未定ならNISA、老後と決まっているならiDeCo、というのが一つの考え方です。 

具体的な例としては以下の通りです。 

 ■NISAから始めるのが向いていそうな方 

・生活防衛資金が薄い人:まずはNISA(または預金)から。急な出費に対応できない状態でiDeCoに入れると、家計が詰まりやすいためです。  

・近い将来に使う予定資金がある人(教育費・住宅など):自由に引き出せるNISAでの運用が向いています。 

 

■iDeCoから始めるのが向いていそうな方 

・老後資金を最優先で積み立てたい人:「60歳まで引き出せない」という制約を、逆に強制的な積立の仕組みとして活かせます(ただし家計の安全域を確保してから)。  

・年収が高く、税率が高い人:掛金が全額所得控除になるため、節税効果が即効性を発揮しやすくなります。 

また、NISAとiDeCoは併用が可能です。それぞれのメリットを活かし、デメリットを補い合えるため、それぞれのライフプランにあった使用をご検討ください。 

  

⑦ まとめ 

NISA・iDeCoとも、正しく使えば生涯の税負担を大きく減らせる、非常に優れた制度です。今回の改正で、その使い勝手はさらに向上する見込みです。 

ただし、「非課税=万能」というわけではありません。投資である以上、元本割れのリスクはありますし、iDeCoには60歳まで引き出せないという資金拘束もあります。 

最適な使い方は、ご自身の所得や家計の状況、お金を使うタイミングや受取時の出口設計によって変わります。「自分の場合はどう組み合わせるのがベストか」を迷われた際は、お気軽に弊所までご相談ください。