名義預金とは何か? 税務署が注目する“家族間のお金”の実態

◆なぜ今「名義預金」が注目されるのか

近年、相続税の課税対象者が増加する中で、税務署が特に注目しているのが「現金・預貯金」の申告漏れです。中でも、形式上は家族名義であっても、実質的には被相続人の財産である「名義預金」は、税務調査で頻繁に指摘される項目です。家族間の信頼関係に基づく資金管理が、税務上は“贈与未成立”と判断されることもあり、相続税の課税財産の対象となる場合がございます。

 

◆名義預金とは何か

名義預金とは、通帳の名義人と実質的な所有者が異なる預金を指します。たとえば、親が子供名義で口座を開設し、そこに自身の資金を入金するケース。あるいは、夫の収入を妻名義の口座で管理するケースなどが典型です。名義人が預金の存在や金額を認識しておらず、管理もしていない場合、税務署はその預金を「実質的には被相続人の財産」とみなします。

 

◆税務署が名義預金と判断する基準

税務署は、以下のような観点から名義預金か否かを判断します:

  • 資金の出所:預金が誰の収入や財産から形成されたか。
  • 管理実態:通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管・使用していたか。
  • 名義人の認識:名義人が預金の存在・金額を把握していたか。
  • 贈与の意思表示:贈与契約書の有無、贈与税申告の履歴など。

これらの要素を総合的に勘案し、「形式より実態」で判断されます。

税務署に名義預金ではなく贈与として認定されるよう、名義人が通帳やキャッシュカードを保管する、贈与税申告書を作成するなど、贈与の成立を証明できる実態と書面の整備が不可欠です。

 

◆最新裁決事例の紹介

令和5年の裁決事例では、孫名義の口座に祖父が定期的に入金していたケースが争点となりました。税務署は「贈与の意思表示がなく、孫が預金の存在を認識していなかった」として、名義預金と判断。結果として、祖父の相続財産に加算され、追加納税が発生しました。実務では、「贈与の実態を証明できるか」が分かれ目となります。

 

名義預金は、家族間の信頼や慣習に基づく資金管理が、税務上は否認されるリスクを孕んでいます。形式だけでなく、実態を整えることが重要です。贈与は“契約”であり、証拠が必要です。相続税対策として預金を分散する際は、税務署の視点を意識した対応を心がけましょう。

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