7月は多くの企業の賞与支給月です。しかし、役員の賞与は、原則、法人の経費にはなりません。そのため、役員の賞与を諦めている社長さんもいるかもしれません。今回は、役員賞与を法人の経費にする、事前確定届出給与の制度を紹介いたします。
・事前確定届出給与とは
事前確定届出給与とは、支払金額・支払日を定められた期間内に所轄税務署に届け出ることで定期同額給与とは別に経費として認める制度です。
・通常の役員報酬
通常、役員報酬は毎月同額を1年間継続して支給する(定期同額給与)か、決められた基準に従い毎月支払う(業績連動給与)方法のどちらかです。大半の法人では定期同額給与のみです。
定期同額給与の場合、例えば、年の途中で大きなプロジェクト成功により大幅な増収が発生するかもしれないときに、それを見越して毎月の給与を高く設定していた場合、プロジェクト失敗により売上がないときも、その高い給与を継続させる必要があります(※経営が傾くほどの影響があった場合等は除く)。
・事前確定届出給与の活用方法
上記のように、年の途中に不確かながら大きな影響のある出来事が予想される場合、事前確定届出給与が活用できます。
例えば、9月にそのプロジェクトの成否が予想される場合に、定期同額給与は例年通りの金額で設定し、11月に事前確定届出給与により役員賞与を設定しておきます。それにより、9月にプロジェクトが成功すれば予定通り賞与を支払い、逆にプロジェクトが失敗だった場合には、賞与の支払いを取りやめることができます。
また、業種として資金繰りが非常に厳しい時期と余裕がある時期が決まっている場合にも、定期同額給与を低めに抑えつつ、資金繰りに余裕がある時期に事前確定届出給与を設定しておく、という方法もあります。
・事前確定届出給与の注意点
① 届け出を行う期限があり、期限内に所定の届け出を必ず行わなければなりません。
② 支給額を届出の金額から変更できません。
例えば100万円で届け出たのであれば、80万円もしくは120万円どちらで支給した場合でも、その支給額全額が経費として認められません。
支給できる金額は届出どおりの100万円か0円かになります。経費として認められない場合、法人は法人税がかかるうえ、役員本人は所得税が課せられるため、よいことがありません。
③ 支給日は、基本的に届出の通りにする必要があります。ただし、合理的な範囲内であれば、ピッタリ届出日の通りでなくとも認められる可能性があります。
事前確定届出給与は、経営のリスクに応じて設定することで、より柔軟な経営計画を立てることができます。細かい要件や注意事項等をよく税理士と相談のうえ、検討したいですね。
